前回まで、「酵素」について2回に分けて書いていきましたが、今回は「水溶性食物繊維」について書いていきますね。
「食物繊維」もよく聞く言葉だと思います。
「食物繊維」の定義は「人の消化酵素によって消化されにくい、食物に含まれている難消化性成分の総称」とされています。
野菜など植物細胞の細胞壁はセルロースという繊維などで構成されているのですが、これが俗に言う「食物繊維」で人の消化酵素では分解されづらいので、難消化性と言われます。
ちなみに炭水化物は糖質と食物繊維が合わさった物です。(炭水化物=糖質+食物繊維)
ここで「あれ?」っと思われた方、いませんか?
「消化酵素」で分解しづらいって事は、野菜などの栄養素って吸収出来ないの?
そうなんです。生野菜などは主に腸内細菌のご飯になります。食物繊維で腸を整えようとは、腸内細菌にご飯を与えて腸内環境を整えようと言い換える事も出来るんです。
「じゃあ、いくら野菜を食べても野菜の栄養は摂れないの?」
そんなことはありません。植物の細胞壁は蒸したり煮たりすることで壊すことが出来ます。
蒸し野菜やお鍋などは植物の栄養素を摂取するには最適の食べ方です。
昔から土器で煮たり、煎じて飲んだりなどありますが、理にかなってるんでしょうね。
そんな「食物繊維」ですが、大きく分けて「①不溶性食物繊維」と「②水溶性食物繊維」に分けることが出来ます。
「①不溶性食物繊維」は、水に溶けにくい食物繊維で、腸の動きを活発にします。
多くの方が思い浮かべる食物繊維は「①不溶性食物繊維」が多いと思います。
野菜・豆類・穀物類の多くに含まれ、バランスの良い食事を心がければ不足することは少ないと思います。
さて、今回のテーマである「②水溶性食物繊維」に移ります。
「②水溶性食物繊維」は水に溶けやすい食物繊維で、便を柔らかくする働きがあります。
それ以外にも注目すべき働きがあるんです。
1,体内の脂肪の排泄
体内にある脂肪は肝臓で胆汁として腸管に排出します。通常は腸から肝臓へ90%以上再吸収されますが、水溶性食物繊維は胆汁と絡まって便として排出するのを促進します。
2,GLP-1分泌促進
水溶性食物繊維は、大腸の腸内細菌によって酢酸や酪酸という短鎖脂肪酸へと変化します。短鎖脂肪酸は大腸のエネルギーになる他にも、大腸のL細胞というところでGLP-1という物質の分泌を促進します。このGLP-1は血糖値上昇を抑制する効果があります。
3,セロトニン・BDNF(脳由来神経成長因子)発現促進
まだ研究段階ですが、大腸の腸内細菌によって水溶性食物繊維から作られた短鎖脂肪酸は、腸のEC細胞という細胞からセロトニンの分泌を促進させます。また、脳内のBDNF(脳由来神経成長因子)の発現を促進するという報告もあります。これらの物質によりストレスに対する抵抗性が上がると言われています。
「②水溶性食物繊維」って凄いですよね。
そんな「②水溶性食物繊維」は、大麦(押し麦・もち麦)・海藻・モロヘイヤ・オクラ・こんにゃく・里芋・アボカドなどに多く含まれています。
是非とも食材として取り入れてみて下さい。